新型コロナウィルスの影響でまだまだ海外渡航が手軽に出来る状況ではありませんが、最近は諸外国でも徐々に国境を開放しつつあります。当社のメンバーも、新型コロナが流行り始めた2020年に帰国した人が多いのですが、最近では新規で海外に行った・行く予定のメンバーもチラホラ出てきています。

今回は、日本人が海外で(主に日本企業の)仕事をする場合の契約形態、納税方法などについて書いてみます。

はじめに(免責)

本記事は、

  • 弁護士、税理士に直接確認した内容
  • そうした専門家が書いた情報
  • 公的情報

などを元に、なるべく正確な内容を記述するように心がけていますが、内容の正確性などに関しては一切保証出来ません。実際に海外で働く場合には、専門家に相談する事をお勧めします。

また、私は税理士では無いので、税金に関する質問・相談にはお答えできません。

では、本題に入ります。

契約形態

雇用契約と業務委託契約

ある個人がある企業の仕事をする際の契約形態としては、大きく分けて

  • 雇用契約
  • 業務委託契約
    • 請負契約
    • 準委任契約

の2つがあります。前者は、いわゆる正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトなども含まれます。後者の「業務委託契約」というのは正式な法律用語では無く、請負契約、準委任契約(※)の総称と考えてもらえれば良いと思います。具体的には、外注のフリーランスの人などが挙げられます。

雇用契約、業務委託契約以外の契約・勤務形態として、派遣や出向などもありますが、それらもここでは扱いません。

※ここでは、委任契約と準委任契約の違いについては説明を省略します。ソフトウェア開発に関する限りは、委任契約は気にしなくて構いません。

リモート勤務の場合の雇用契約と業務委託契約の違い

今までであれば、雇用契約(正社員、契約社員、パート等)の人は、会社に出社して上司などから業務の指示を受けて作業するのに対して、業務委託契約(例えばフリーランス)の人は、自分自身の事務所などで作業して成果物を顧客に納入するという明確な違いがありました。あるいは、フリーランスの人が顧客の事務所に出社したり常駐していたとしても、仕事の進め方は本人の裁量に任されているという違いがありました。

ただ、リモート勤務が一般化した現在、リモート勤務の雇用契約の人(例えば正社員)とリモート勤務のフリーランスの人との区別が付きにくくなっています

では、雇用契約と業務委託契約の違いは何でしょうか。検索すると色々なサイトの情報が出てきますが、個人的に分かりやすいと思ったページを1つ挙げておきます。(雇う側からの視点で書かれたページですが。)

請負契約・業務委託契約が「雇用契約」とならないようにするためのポイント – BUSINESS LAWYERS

雇用契約と業務委託契約の具体的な違いは色々あるのですが、リモート勤務の場合に重要と思われるのは

  • 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
    • 業務委託契約の場合、やりたくないタスクは自由に断れる
  • 業務遂行上の指揮監督の有無
    • 業務委託契約の場合、仕事の進め方を自分で決められる
    • 業務委託契約の場合、勤務時間を自由に選べる

です。業務委託契約の場合は、これら(や上述のページに書かれているその他)の条件を満たしている必要があり、そうでない場合には、雇用契約である必要があります。

違った言い方をすると、こうした条件を満たしている業務であれば、業務委託契約でも雇用契約でもどちらでも良く、満たしていないのであれば雇用契約を結ぶ必要があります。

海外で働く場合には

ようやく本題ですが、海外に住んでリモートで日本企業の仕事をする場合、契約形態としてはどのような形になるのでしょうか。

結論から言うと、多くの企業が、海外在住の人とは業務委託契約を結んでいるようです。

(現地法人や現地事務所ではない)日本にある日本企業が海外在住の人と雇用契約を結ぶ事も可能ですが、

  • 社会保険関連の手続きが国内在住者と異なる
  • 海外在住者にも対応できるように就業規則を修正する必要がある

といった面倒な点があるため、どうしても雇用契約にしたい理由(例えば指揮監督したい)が無い場合以外は、業務委託契約を選ぶようです。

雇用契約を選ぶ場合には、以下のようなページが参考になります。

一方、業務委託契約の場合は、企業の立場からすると、契約を締結し業務を依頼してちゃんとお金を支払えば、税金・年金その他について考える必要はありません。

もばらぶではどうしているか

他の多くの企業と同様に、もばらぶの場合も、海外在住の人とは業務委託契約を結んでいます

働く側の立場では、業務委託契約と雇用契約はどちらが良いか

働く人の立場からすると、基本的には業務委託契約より雇用契約の方が権利が多く、身分としても強く保護されています。簡単には解雇されませんし、健康保険・厚生年金・労災保険などもあります。また、最低賃金や休暇なども法律で定められています。

それに対して、業務委託契約の場合は、労働条件は契約内容に完全に依存しています。極端な話をすれば、時給100円のような仕事もあれば時給1万円のような仕事もあります。雇用契約に比べて権利が少なく保護されていないというデメリットがある一方、前述の通りやりたくない仕事は断ることが出来ますし、「残業を月○○時間までに抑えて下さい」と人事部などから言われることも無いので、好きなだけ仕事をする事が出来ますし、土日や深夜に仕事をしても全く問題ありません。

誤解を恐れずに言うならば、自分自身をしっかり管理できる人であれば業務委託契約の方が向いていると思います。

海外在住フリーランスの税金

海外に住むことになり、日本の会社(もばらぶ等)と個人で業務委託契約を結んだ場合の税金について、少し書いてみます。

日本あるいは外国に法人を作ってその法人から役員報酬をもらう場合、個人の場合とは色々と異なるのでここでは扱いません。

住民税

住民税はシンプルです。

  • 住民票がある場合、その自治体に納税する
  • 海外渡航に際して住民票を抜いた場合、納税する必要が無い

「海外に住む」といっても、例えば半年未満の滞在であれば住民票を抜かない場合も多いと思います。住民票を抜いていない場合は、通常通り居住の自治体に住民税を支払います。

所得税

所得税も一見似ているように見えます。基本的には以下の通りです。

  • 日本の「居住者」は、日本で所得税を納税
  • 日本の「非居住者」は、居住している国で所得税を納税
    • 日本国内で発生した所得のみ、日本で所得税を納税

ここで厄介なのが、以下の2点です。

  • 居住者かどうかの判定は住民票の有無では無い
  • 国内で発生した所得とは何か

これに関する公的な情報としては、以下のページがあります。

国税庁のページは(当然ですが)専門用語が多く分かりにくいですし、建前というか原則しか書いていません。実際にどう解釈されていてどう運用されているのかは複雑で、詳細は検索をしてもらったり、海外で仕事を始める前には専門家に相談することを強くお勧めしますが、あえて単純化するなら

  • 居住している国で就労可能なビザ・ステータスがある場合、その国で納税
  • それ以外は、日本で納税

というのが一般的かと思います。

そもそも、就労可能なビザ・ステータスでなければ、当然ながらその国で働く事はできないので、その国に所得税を納税するというのも無理な話です。そうした場合には、日本で納税するしかありません。

また、就労可能なビザ・ステータスが無い場合は、現地で銀行口座を作れない国がほとんどなので、基本的には日本の銀行口座に仕事の代金を振り込んでもらう形になります。

まとめ

海外に住みつつリモートワークで日本の仕事をしたい人は多いと思いますが、契約や税金などについてよくある疑問について今回書きました。結論だけまとめると

  • 日本の会社とは業務委託契約を結ぶのが一般的
  • 住民票を抜いていれば、住民税の納税は不要
  • 現地で就労可能なビザ・ステータスがある人以外は、日本で所得税を払う

といったところでしょう。

海外在住の場合、これ以外に年金・保険なども気になると思いますが、それに関しては別途書こうと思います。