小規模 M&A

ここ数年、小規模M&Aがちょっとしたブームになっています。経営者が高齢かつ後継者がいない中小企業が多く、そのまま廃業してしまうと日本の経済にとってもマイナスということで、国が補助金を出して事業承継を積極的に後押ししているのも要因の一つだと思います。

従来の M&A のイメージとしては、大企業が別の企業を買う、というのが一般的だと思います、それに対して、小規模 M&A は買う側も買われる側も小規模で、極端な例ですと普通の会社員が数百万円で零細企業、あるいは零細企業の一部門・一店舗を購入するというのもあります。

小規模 M&A が活発になる事により、

  • 買収される側
    • 後継者問題が解消される
    • 経営者が変わり外部の知見が導入される事で業績が向上する
    • 財務が安定する
  • 買収する側
    • 少ない資金で新規事業に参入できる
    • 身の丈に合った業務拡大が出来る

などといったメリットがあります。

小規模 M&A の問題点

もちろん小規模 M&A は良いことずくめではなく、問題もあります。小規模 M&A 自体の問題もありますが、どちらかというと M&A 仲介業者の問題の方が多いですが。

M&A 業者の利益相反

「M&A 利益相反」や「M&A 両手取引」などで検索してもらうと色々な情報(M&A 業者のサイトも多いことに注意)が出てくるかと思いますが、ここでも簡単に説明します。

M&A では、高く売りたい売り手と安く買いたい買い手の双方の利害は対立している状態です。M&A 業者は、そうした利害の対立している買い手と売り手の両方の代理人として動くため、両方の利益を追求することは理論的には出来ず、どちらか一方の利益のみを追求する、あるいは双方ともほどほどの利益で我慢してもらうという必要があります。

ただ、実際には、買い手はリピーターとなる可能性が高いのに対して、売り手は一度きりの取引であることがほとんどなので、業者としては買い手の利益を優先する傾向にあるというのが主要な問題点です。

M&A 業者には資格などは不要

M&A 業者になるための国家資格や許認可などは存在しません。そのため、悪質な業者も多数存在します。

それであれば、実績のある大手企業を選んでおけば安心かというとそんなこともなく、つい最近も最大手の日本M&Aセンターが不正会計をしていたというニュースもありました。

日本M&Aセンター、過年度決算を訂正 売上高不正83件: 日本経済新聞

良い売り手/買い手を探す前に、良い業者を探すのにも苦労するというのは、好ましい状況とは言えません。個人的には法整備などが必要かなと思います。

(余談)日本M&Aセンターとの過去のやり取り

余談ですが、当社のような零細企業にも日本M&Aセンターからのパンフレットみたいなものが郵送されてきたことがありました。アンケートに答えると書籍が貰えるとのことだったので回答したのですが、その後、

  • 日本M&Aセンターから、オンラインで面談を出来ないかというようなメールが来た
  • → 面談をしないと書籍がもらえないのなら書籍は不要と返信した
  • → 書籍を郵送すると返信があった
  • → 書籍は送られてこない

という感じで、日本M&Aセンターに対する印象は良くありません。

デューデリジェンスが難しい

小規模 M&A の場合、買う側は中小企業や個人である事が多いと思いますが、中小企業や個人の場合、通常は企業や事業に対するデューデリジェンスのノウハウは無いため、売り手の価格が適正か、リスクは無いか、などを判定する事が困難です。

そうした点からも、専門知識を持っていると期待される仲介業者が重要となるわけですが、前述の通り仲介業者は玉石混交でどちらかというと石の方が多いため、小規模 M&A を成功させるのはなかなかハードルが高いと思います。

もばらぶと M&A

以前、英語教室の事業を買った

つい最近 IT エンジニア専用のオンライン英会話サービスをリリースしましたが、それの元となった日常英会話教室は、小規模 M&A で事業を譲り受けました。

正確な買収金額の公表はしていませんが、100〜500万円の範囲です。日常英会話教室はコロナ禍が長引いた時点で閉鎖したため、買収金額の元は全然取れていないのですが、

  • 開発メンバーの英語レッスンを実施することにより、メンバーの英語力が上がった
  • それを元に、IT エンジニア専用のオンライン英会話サービスを立ち上げられた

というのを考えると、まぁ良かったのかなと思っています。

売却は全く考えていない

前述の日本M&Aセンター以外にも、多くの M&A 業者から会社宛にパンフレットなどが届きます。内容としては「貴社の買収に興味のある会社があります」といったものですが、当社は売却を全く考えていません。

もちろん、良い会社に買収されれば、会社としてより大きな事業が出来るようになるなどのメリットがあることは理解しています。ただ、私にとっての会社とは、(大げさに言うと)自分が理想と考える社会を実現するための手段、あるいはそのための実験の場という意味合いが強く、そのために必要な資金を得るために事業を大きくして利益も増やしていきたいのですが、会社を大きくすること自体が目的では無いので、大きな会社に買収されて大きな会社の一員になるというのには魅力を感じません。

ちなみに、M&A 業者からのパンフレットには具体的な情報がほとんど書かれていないので、仮に売却の意思があったとしても、検討のしようがありません。例えば、製造業、年商XX億円、くらいしか書かれていません。詳細は面談で、という話なのは承知していますが、そもそも、その買い手企業が実在するのかどうかも怪しいところです。

今後も機会があれば小規模 M&A はしてみたい

ここ2年くらい、思ったほど会社は伸びていないのですが、それでも着実に規模も大きくなり、順調に利益も出しています。現金もある程度はあるので、当社の方向性と合う企業・事業で良いものがあれば、買収も検討したいと思っています。

まとめ

ここ数年、小規模 M&A がちょっとしたブームとなっています。メリットも多い反面問題点も多く、それらの問題の改善が見られないと、業界自体に悪影響があるのでは無いかと懸念しています。

もばらぶとしては、会社を売却するつもりは全くありませんが、方向性の合う企業・事業の買収は、良い案件があれば検討したいと思っています。