本ブログでは主に会社の事を書いているのですが、たまには一般の方が読んでも役に立つような内容を書いてみようと思います。

ということで、今回はリモートワーク(=テレワーク)をこれから始める会社・個人向けに、リモートワークを成功させるコツ・必要な事などを書いていきます。(長文です)

はじめに

当社の状況

当社はソフトウェア開発企業で、ここ5年くらいは(ほぼ)リモートワークで開発を進めています。メンバー数は、最初は数人でしたが、現在はプロジェクトの忙しさで波はあるものの、業務委託契約の方も含めて10〜20人程度です。

本記事に書く内容は初心者向け

本記事はリモートワークをこれから始める初心者・企業を主な対象読者としています。業種は問いませんが、ソフトウェア業界固有の話も多少は出てくるかもしれません。

内容は、全て当社・私が考え出した内容では無く、世間一般に言われている内容なども含みますが、なるべくそれらは区別するようにします。

では、前置きはこの程度にして、本題に入ります。

成功させるための前提条件

細かい時間管理をしない≒成果に対する評価

多くの方が述べてますが、いわゆる成果報酬的な仕事とリモートワークの親和性は高いです。

簡単な例ですと、ウェブサイトを作ってXX万円、みたいなものです。仕事を依頼する側からすると、業務を行う人がそれに何時間・何日かけたかは、(期限と品質さえ守ってもらえれば)あまり気にしません。

では、成果報酬的な仕事、成果主義の評価体系(※1)の会社で無いとリモートワークがうまくいかないのでしょうか。私はそうでは無いと考えます。

一番大切なのは、「細かい時間管理をしない」ことだと思います(※2)。具体的には、以下のような事をするとリモートワークは上手くいきません。

  • ×着席しているか、常にカメラで監視する
  • ×ちょっとした離席でも、毎回必ず報告させる

そもそも、着席していてもサボることは出来ますし、通常のオフィスでも、トイレやたばこで離席する人もいます。

当社では、人によって詳細は異なりますが、基本的には時給M円、日給N円、みたいな時間単位の報酬体系です。ただ、どのプロジェクト・タスクにどれくらい時間を使ったか、くらいは確認していますが、細かい時間管理はしていません。

基本的には、(「XというタスクにN時間使った」というような)報告してもらった内容を信用し、それが払っている金額に見合わないと判断されれば、評価されないという単純な仕組みです。

※1: 日本では、成果主義が過剰にもてはやされた時期もあり、その頃に中途半端な成果主義を導入したもののうまく行かなかった企業も多く、その反動として、成果主義やそれに類する言葉にアレルギー反応を持つ方も割と多くいるようですが、ここではそれには深入りしません。

※2: あくまで業務のマネジメントという観点での話ですので、労務管理(休憩時間、残業代等)についてはここでは触れません。

ジュニアレベルの人を完全リモートにしない

これも多くの人が指摘していますが、新卒社員などのジュニアレベルの人には、完全リモートは避けた方が良いです(例外もいますが)。

当社ではどうかというと、そもそも新卒採用は行っていないので、ジュニアレベルの人は基本的には入ってきません。入社(あるいは契約開始)時点では若くて経験の少なかった人はいますが、試用期間中にふるいをかけるため、残った人達は総じて学習速度が速く、リモートワークにも適用しました。

新卒採用を行っている会社などが取り得る解決策としては、一定期間(例えば1年)は、週に数日の出社を義務づける、というのが一般的です。

会社側で準備するもの・こと

ビデオカメラ付きノートパソコン

リモート勤務中の人は携帯電話で、会社にいる人は会社の固定電話で、という形で電話会議を行っているケースも見かけますが、音声だけでの場合に比べると、映像がある方が会議がスムーズに進みます。

ビデオカメラ付きのノートパソコンを出来れば全員分、それが難しい場合は、少なくとも同時にリモートワークをする人数分用意・支給することをお勧めします。

ビデオ会議用ツールの契約

とりあえずは Microsoft Teams でも Zoom でも何でも良いと思いますので、ビデオ会議用ツールを契約しましょう。

無料で使えるツールもありますが、人数制限(例: whereby)があったり、仕事で使うのに適してなかったり(例: LINE のグループチャット)するものも多いです。

リモートワークに合わせた社内規則の整備

リモートワークを本格導入するに当たり、以下のような規則の整備・改定が必要となると思います。

  • 就業規則: 勤務場所、勤務時間などの定義が変わったりするので
  • セキュリティ規程: 出社時に会社のパソコンを持ち歩くことになるため

ペーパーレス・はんこレスの推進

当社の取引先に、今回のコロナ禍で社員の大半を基本的にはリモートワークにした企業があります。そのくらいの先進的な企業なのですが、とある方がとある書類について

「次回出社時に捺印して、PDFでお送りします」

と言ってきたのには驚きました。捺印の省略、せめて捺印では無く署名で代用するなどの対応を取れば、わざわざ出社しなくても良いのにと思いました。

リモートワークを導入するのであれば、ペーパーレス・はんこレスも同時に進めないと、印刷・捺印・郵送といった業務のためだけに出社する必要が出てきます。

リモートワークアンチパターン

ここでは、リモートワーク導入に当たってやってはいけないことをいくつか挙げていきます。

×一部の社員への導入

ここ最近は、新型コロナへの対応という意味でリモートワークを導入する企業が大半ですので少なくなりましたが、以前は、以下のようなケースをよく見かけました。

  • ×育児中、介護中の人のみリモートワークを許可
  • ×高スキルだが遠方に住んでいる人のみリモートワーク

このような制度にすると、リモートワークをしている人としていない人の間で様々な分断が発生します。例えば、以下のようなものです。

  • リモートワークを許可されている人が妬まれる
  • 出社している人だけの会議で話が進む

リモートワークを導入するのであれば、少なくとも部署単位で一斉に導入することをお勧めします。

×許可制にする

リモートワークしたいときに申請をして許可を得る、という方法はやめた方が良いです。(フレックスタイム制度が出始めたときにも同じような事をしていた会社が結構有りました。)

理由としては、以下の通りです。

  • リモートワークは推奨されていないと社員に解釈される
  • その結果利用されなくなり、リモートワーク自体が形骸化する

昨今の新型コロナウイルスの感染力を考えると、逆に出社自体を許可制にしても良いのでは、という気もします。

×役職者がリモートワークをしない

上司が出社しているのに部下の自分だけリモートワークをするという状況は、多くの日本人に取ってはやりづらいものです。

リモートワークを導入したからには、社長、役員等、上位の役職者ほど積極的に利用して範を示すべきです。

コミュニケーションで心がけること

非同期コミュニケーションに慣れる

オフィスでの仕事であれば、誰かに話しかければ、基本的にはその場で返事が返ってきますが、チャットなどの非同期コミュニケーションでは、その場ですぐ返信が返ってくるとは限りません。

すぐに返信がこなくても気に病んだり怒ったりせず、気長に待つか、急ぎの話であれば「XXまでに返信が欲しい」などと伝えると良いと思います。

文字のコミュニケーションでは表現に気をつける

リモートワークではチャット・電子メールなど、文字だけのコミュニケーションの使用頻度が高くなります。

チャットと電子メールで共通の話として、表情やジェスチャーなどが伝わらないので、誤解を招かないような丁寧な表現を心がけましょう。会社の文化によっては、絵文字を上手に使うのも良いと思います。

チャットと電子メールで異なる点ですが、チャットはどちらかというと手軽なコミュニケーションの手段ですので、チャットの世界に電子メールのマナーをそのまま持ち込むのはお勧め出来ません。例えば、毎回「お疲れ様です」とつけるとか、自分の名前を名乗るとかです。

早め・高頻度を心がける

リモートワークでは、ビデオ会議の時などを除くと同僚の顔が見えないため、仕事に詰まってたりしても他の人は気づきにくいですし、どんな作業をしているのかも分かりません。

今、どんな作業をしているのかは適宜簡単に報告したり、悩んでいるところがあれば早めにチャットに書き込むなど、ちょっとした事に気をつけるだけで、コミュニケーションは大分円滑になります。

快適に在宅勤務を行うために

さて、ようやく自宅でリモートワークをすることになったとしても、最初は慣れない人も多いと思います。ここでは、自宅で仕事をしやすくするためにどうすれば良いかを説明します。

公私を区別する

自宅で仕事する場合でも、仕事と私生活の区別はつけた方が良いと、多くの人が言っています。例えば、以下のような事です。

  • 外出する予定がなくても、朝は服に着替える
  • 働く時間は事前に決めておく
  • 休憩時間は、パソコンを落とす、会社からの電話に出ない
  • 仕事中はテレビをつけない、漫画とかを周りに置いておかない
  • 小さい子供は保育園などに預ける

なお、区別の付け方は人それぞれだと思いますので、自分にあったやり方を徐々に見つけていくのが良いと思います。

出来れば仕事用の部屋を用意する

前項の公私を区別する件に関連しますが、出来ればご飯を食べたり家族が過ごす部屋とは別で、仕事をする部屋を1つ用意した方が良いです。

ただ、住宅事情でなかなかそうもいかないと思います。そういう場合でも、家具の配置やパーティションなどを上手く使って、(完全に分けることは出来ないにしても)仕事をする空間にあまり生活感を持ち込まない方が良いと思います。

また、夫婦共にリモートワークの場合は、同じテーブルなどで仕事すると相手の会議の話やキーボードの打鍵音などが気になりますので、お互い離れた場所で仕事をすることをお勧めします

機材にある程度お金をかける

あまり高価なものにする必要はありませんが、

  • 机、椅子
  • キーボード
  • モニター
  • ヘッドセット

などは使いやすいものを選んでおくと良いと思います。

また、電源コード、充電器などの小物類は少し多めに各部屋に用意しておくと、場所を移動するときにいちいち持って歩く必要が無いので便利です。

適当に気分転換をする

リモートワークをするとサボる人も一定数いますが、それ以上に仕事をやり過ぎてしまう人の方が多いようです。また、家で仕事をしていると、人と対面で話す機会も殆ど無く、滅入ってしまう人も結構いるようです。

そうならないためには、一定時間毎に休憩・気分転換をすることをお勧めします。

  • 飲み物を飲む
  • 軽い運動をする(ストレッチ、腕立て伏せ10回、など)
  • 家の周りを散歩する、近くのコンビニまで買い物に行く
  • 5分程度仮眠する

などがお勧めです。

リモートワークの限界

最後に、リモートワークで出来ないこと、向いていないことなどについて書いていきます。

発散型の議論・思考にはあまり向いていない

リモートワークでは、やるべき内容が明確になっている仕事との親和性が高いのですが、その反面、以下のような発散型の思考を求められる場面にはあまり向いていません。

  • 新規事業のためにアイディアを多く出す
  • 会社のビジョンについて議論する
  • ウェブサイトのデザイン案について議論する

一般的には、こうした業務を行う場合には、1箇所に集まって対面で行った方が成果が出るとされています(※)。

※: ただ、リモートでも何とかやりようがあるのでは無いかと我々は考えています。その辺は、機会を改めて書こうと思います。

出来ない職種がある(当然の話だが…)

当たり前すぎる話ですが、現時点ではリモートワークがほぼ無理な職種もあります。例えば以下のようなものです。

  • 医療
  • 物流
  • 飲食
  • 性風俗

ただ、今後の技術の進歩で、こうした職種もリモート化・自動化が進む可能性もあります。

教育、特にOJTがしづらい

現時点では、リモートで教育、特にOJTをうまくやっている例はあまり見かけません(ご存知であれば是非教えて頂きたいです)。

当社では、社内勉強会、個人面談、ビデオチャットなどである程度は補っていますが、メンバーの教育が上手くいっているとまでは言い切れません。この辺は試行錯誤しつつ、良い方法が見つかったらまたブログ記事にまとめようと思います。

まとめ

本記事では、リモートワーク初心者・企業に向けて、リモートワークを円滑に導入するコツを紹介しました。

新型コロナウイルスの流行という思いもしなかった出来事により、リモートワークが日本でも随分広まりました。ただ、導入したもののあまりうまくいかず、緊急事態宣言解除後は元に戻ってしまった会社も結構多いようです。

リモートワークは万能薬ではありませんが、上手に使えば業務を円滑に進めたり、苦痛な通勤を減らす事が出来るなど、多くのメリットがありますので、是非上手に活用して頂きたいです。

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