この記事では、システム開発プロジェクトにおける開発会社と発注会社のコミュニケーションの問題について、考察しております。
弊社で実施した「システム開発・改修のリプレイスに関する実態調査」(システム開発プロジェクトに携わっており、元の開発会社から他社にシステム開発・改修のリプレイス (乗り換え)を行ったことのある企業の経営者、情報システム担当者など107名に対し調査を実施)の結果では、8割の回答者が開発会社とのコミュニケーションの質に課題を感じていると回答しております。
発注会社と開発会社間で必要な「コミュニケーションの質」とはどのようなものなのでしょうか。
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調査結果から見る課題
本調査において、過去にシステム開発・改修のリプレイスを行った回答者の8割強が「開発会社のコミュニケーションの質が低い」と感じたことがあると回答しています。質の低いコミュニケーションとは、相手の要望や期待値に対する理解や情報の伝達が不十分な状態であり、このような状態では、発注会社の満足度を維持することは困難です。
さらに、本調査では、リプレイス理由の第1位は「成果物の質が低かった」、第2位は「技術力に不満があった」という結果でした。回答者の8割強がコミュニケーションによる課題を感じているという事実から、これらのリプレイス理由がコミュニケーションの質と密接に関連していることが示唆されます。質の低いコミュニケーションは、プロジェクト全体の進行に影響を及ぼし、結果として成果物の質を低下させ、期待される技術力を発揮できなくする要因となり得るのです。
成果物の質や満足度にも影響を与える「質の低いコミュニケーション」をどのように防ぎ、開発会社と発注会社が良好かつ継続的な関係を構築・維持できるかについて考えたいと思います。
質の低いコミュニケーションを招く要因
コミュニケーションに問題があると感じる時は、多くの場合、相手に対する認識や期待値の理解にズレがあったり、共通認識が欠如していたりすることが多いようです。開発会社にとって、過去に実装した技術や類似のシステム開発の経験が豊富なことが多い一方で、発注会社にとっては、初めてWEBサービスを開発する、あるいはモバイルアプリを導入するというケースもあるでしょう。
発注会社は開発会社が自分たちの意図を察してくれると期待し、開発会社は発注会社が細かい部分を理解していると思い込むことがあります。このように、お互いの立場や経験の違いにより共通認識が欠如することで、コミュニケーションの質が低下し、プロジェクトが大幅に遅延するケースをよく目にします。
また、プロジェクトが大幅に遅延しない場合でも、運用開始後にシステムに不具合が見つかり、元の開発会社ではなく弊社に新たに改修を依頼されることもあります。
それでは、開発会社と発注会社の間のちょっとしたズレや、共通認識の欠如を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。以下、これまでの引き継ぎ、リプレイス開発案件の経験を元にポイントをお伝えします。
避けるべき3つのケース
プロジェクトの目的、成功状態、優先順位の定義が曖昧
システム開発プロジェクトにおいて、発注会社が具体的なプロジェクトの目的、成功状態、優先順位などを定義しておくことは非常に重要です。これが曖昧であると、プロジェクトの後の工程で具体的な要件定義が難しくなり、結果としてプロジェクト全体が遅延したり、期待する成果が得られなかったりするリスクが高まります。
発注会社が開発の専門知識を持たないことは珍しくないでしょうが、それ自体は問題ではありません。重要なのは、発注会社がしっかりとしたプロジェクトのイメージを持ち、それを開発会社と具体的にする必要があることを認識することです。専門知識がない場合でも、明確なイメージを持ち、開発会社と密にコミュニケーションを取ることで、双方で共通認識を持ち、プロジェクトを成功へと導くことができます。
意思決定者が不明確
発注会社のプロジェクト責任者が実際の意思決定者でない場合や、社内の意思をうまくまとめられない場合、開発会社とのコミュニケーションが難しくなります。また、(意図せずとも)プロジェクト内に複数の最終意思決定者がいる場合には、開発会社が異なる要望に振り回されるケースが多く見られます。プロジェクトの初期段階で、誰が最終意思決定者であるか、チーム内の役割分担・レポートラインを明確にし、その情報をチームメンバーはもちろん、開発会社とも共有することが重要です。
共通言語がないまたは乏しい
システム開発プロジェクトにおいて、発注会社と開発会社の間で共通言語がないことは質の低いコミュニケーションを招く要因となります。発注会社としては、プロジェクトの初期段階で十分なヒアリングを行い、共通の用語や概念を定義することが重要です。また、定義書の作成や定期的な確認を通じて、共通認識を維持する努力が求められます。開発会社と協力しながら、積極的にコミュニケーションの質を向上させることで、プロジェクトを成功に導くことができます。
もばらぶの取り組み
上述の通り、コミュニケーションの質を落とさないためには、発注会社の意識が重要ですが、開発会社の努力や工夫も不可欠です。弊社では、質の低いコミュニケーションを防ぎ、お客様と常に同じ目線で、共通認識を持つために、以下のような工夫を行っております。
- 可視化:キックオフでヒアリング項目を明文化、設計書で共通言語の基盤を作る
- 標準化:定例会議のフォーマットを決め、効率化する
- ナレッジマネジメント:使用用語集を必ず作成し、発注/受託双方で共有する
- リスクマネジメント:プロジェクト管理ツールやGitHubなどでリアルタイムに進捗を共有し、課題発生時やスケジュール遅延時のリカバリーに備える
参照:ソフトウェアを外注する場合にやるべき事(1)-序論
ソフトウェアを外注する場合にやるべき事(2)- 共通
大量データオンプレミスサーバーのAWS移行
(初心者向け)仕事で Git を使う場合の注意点、コツ等
参照:Created in Lucid (lucid.co)
これらのことを着実に行うことで、お客様の不安が取り除かれ、コミュニケーションの質を向上させることができると考えています。また、基本なくして応用的な対応はできません。これらを積み重ねることで、お客様の置かれている環境やビジネス全体への理解の解像度が上がり、結果的にさらなる満足度の向上へと繋がると考えています。
コミュニケーションがプロジェクト成功の鍵
システム開発プロジェクトにおける質の低いコミュニケーションは、開発会社と発注会社の立場の違いによるちょっとしたズレ、共通認識の欠如に起因することが多いです。
もばらぶでは、定例会議の実施やリアルタイムの進捗確認、お客様の組織体制を考慮する等の基本的な取り組みを丁寧に行うことで、お客様との共通認識の形成、お客様それぞれが置かれている状況の理解に努めています。基本的な取り組みがあってこそ、より良いコミュニケーションが可能となり、開発会社という垣根を超えて、お客様とビジネスパートナーとして良好且つ長期的な関係構築が実現しています。
もし、開発会社様との間でコミュニケーションの課題(伝えたいことが伝わらない、共通認識を持つのが難しい、単に雑な対応など)をご経験されていましたら、是非、お気軽にご相談ください。
調査報告書
この記事で紹介した調査の詳細な報告書は、下記リンクからダウンロードできます。システム開発プロジェクトにおけるコミュニケーション改善の参考にぜひご活用ください。
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