民法が大幅に改正された

IT系のニュースサイトなどでも記事になっていますし、このブログでも1度取り上げましたが、120年ぶりに民法が改正されました(※)。また、改正内容が多岐にわたる大幅な改正となっているようです。

本記事では、中小開発会社にとっての民法改正のポイントと、それに関連して準委任契約の話題をいくつか記載します。

※なお、改正民法は今年の6/2に公布されていますが、施行日はまだ決まっておりません。公布から3年以内に施行するルールとの事なので、遅くとも2020/6/2までに施行されます。

免責

筆者は法律の専門家ではありません。なるべく正確な内容を書くように心がけますが、記載内容の正確性等は保証いたしかねます。

中小開発会社・個人開発者が気にすべき点

ここでは、弊社のような中小開発会社、あるいは個人の開発者が知っておくべき・気にすべき点を、以下に記載します。

  1. 瑕疵担保責任の期間が、納品後1年以内→瑕疵を知ってから1年以内に変更
  2. 「成果完成型」の準委任契約が導入された
  3. 契約の内容が優先(改正前も同じ)

これ以外にも、開発会社に関連する変更点はいくつかありますが、上の3つが一番重要かと思います。

以下、3つそれぞれについて説明します。

瑕疵担保責任の請求期間

従来は納品後1年以内に見つかった瑕疵に対して、発注側が修正などを請求できました。

改正後は、瑕疵(改正後は「契約不適合」という呼び名に変更)を「知ってから」1年以内(ただし、最大で納品後5年以内)であれば請求可能、と変更になりました

「成果完成型」の準委任契約

改正前の準委任契約は、N円/時みたいな、単位時間あたりに一定の金額を受け取る契約でしたが、改正民法では、成果物を納品して初めて代金を請求できるタイプの準委任契約が導入されました。(従来型の準委任契約も引き続き存在。)

この場合、成果を完成した後でないと代金を請求できないという点で請負契約と殆ど同じになりますが、準委任契約の場合、契約解除や瑕疵担保責任のなどの規定が無い点で、請負契約と異なります。

契約の内容が優先(改正前も同じ)

ここまでで書いた、改正民法の変更点ですが、いずれも任意規定(任意法規)と言うものらしく、契約書にこれらと矛盾する内容が書いてあった場合は、あくまで契約書の内容が優先されます。

例えば、契約書に瑕疵担保責任に関する規定などが特に記載されていなければ、改正民法の施行後は、顧客が瑕疵を知ってから1年間は請求可能という規定がそのまま適用されますが、契約書に「納品後1年以内」と記載されていれば、そちらが適用されます。

実務的には

弊社での例

弊社がとある会社様(以下A社)から受注した案件では、瑕疵担保責任ありの準委任契約でやらせてもらっています。支払いは、毎月精算しています。

法律上、準委任契約の場合は瑕疵担保責任は発生しませんが、契約書の内容が優先されるのは上で述べた通りです。

ただ、実務的には、瑕疵担保責任を問うのであれば、成果物の定義などを明確にする必要がありますし、それが最初からしっかり出来ているケースではそもそも請負契約を結ぶケースが多いと思います(少なくとも発注側としては予算が固定できるというメリットがありますし)。また、仮に瑕疵担保責任付きの準委任契約を結んだとしても、運用としては、今までの準委任契約を同じような形になってしまうケースが多いように思えます。(A社との案件でも、実態としてはそんな感じです。)

成果完成型の準委任契約にすべきケース

改正民法で導入された成果完成型の準委任契約にすべきケースがないか考えてみたのですが、個人的には以下のシナリオが思いつきました。

  • 発注側:成果物は明確
  • 発注側:委託先は決まっている
  • 受注側:プロジェクト開始前の段階では、実装方法があまり見通せていない
    • 見積りに時間がかかりそう、あるいは不正確なものになりそう
    • 見積りを出すとしたら、最悪のケースを想定した高額のものとなる

例えば、A社がB社に仕事を依頼したいが、B社としては、この案件にどのくらいかかるかちょっと見通せないため、見積りを依頼された場合、高額なものを出さざるを得ない。A社としては、最悪、その見積り金額くらいを支払うのも厭わないが、できれば実際にB社がかけた時間に比例した金額を支払いたい。けど、確実に成果物を納品してほしい。そんなケースです。

要は、今までのような時間単位の準委任契約で良いが、システムが完成しないのにお金を払うというリスクを避けたい場合です。

瑕疵担保責任ありの準委任契約

上のケースに瑕疵担保責任の条項を付けたのが、瑕疵担保責任ありの準委任契約なのかなと思います。

契約内容としては、基本的には請負契約と同様ですが、支払う金額のみ実働時間に比例するという形になります。

その他の契約形態

民法に規定のあるソフトウェア関連の典型契約としては、請負契約と準委任契約の2つですが、前述の通り、任意規定に関しては法律の内容より契約の内容が優先するため、契約内容を工夫することにより、受注側・発注側ともにメリットとなる契約となる可能性があります。

以前書いた以下の記事も合わせて参考にして頂ければと思います。

ソフトウェア開発に関する契約形態 – もばらぶん

まとめ

120年ぶりに改正された民法では、内容が大きく変わっており、ソフトウェア開発に影響を及ぼす規定がいくつもあります。ただ、基本的には(任意規定に関しては)契約内容が優先されますので、法律の趣旨を理解した上で契約書の内容を精査する必要があると思います。

参考

以下のサイトは何度か読み返しました。また、以下に挙げた以外でもいろんなサイトで特集されていますので、興味のある方は参考にしてください。