きっかけ
中小企業が自分達で業務システムを作れると良さそう
地方の中小企業のIT化をサポートする仕事とか出来ないかと、何となく考えていて、過去に何回かブログで触れました。(「 何に特化するか」、「商工会議所に加入しました」)
1つの方向性として、地方の中小企業がSIerに丸投げするのではなく、自分達で主体的に(必要に応じてSIerをうまく利用して)業務アプリを作れるようになると良いと考え、そういうののサポートをしたいと考えていました。
具体的には、単なるシステム導入だけでなく、IT化に関するトレーニングなども実施していければと考えていました。
それ、 kintone なら出来るよ
そうした中、プログラムの知識がほぼ不要で業務アプリを作れる kintone の存在を知りました(というか思い出しました)。
幸運なことに、たまたま、周りに kintone に非常に詳しい人物がいて、その人から長所・短所も含めて色々教わっていくなかで、これは使えるという確信を持ちました。
それ、Zoho Creator でも出来るよ
ただ、kintone は、既に扱っているベンダーが多く、前述のような教育とかを絡めたとしても、今から kintone を扱ったところであまり特色は出せないように感じて、他になにか無いか調べてみました。
その結果、 Zoho Creator と Salesforce App Cloud が引っかかりました。Salesforce App Cloud は比較的新しいサービスなのですが、Zoho Creator は比較的前からやっている実績があること、そして、弊社では、たまたま Zoho のオフィススイートを使っていることから、Zoho Creator を試してみることにしました。
Zoho Creator で1日でアプリが作れた
基本情報、出来ること
Zoho Creator は無料で使いはじめることが出来ます。料金表はこちら(PDF)。
どんなことが出来るかは、Zoho Creator のトップページにあるアニメーションで、ある程度の事は分かると思いますが、ドラッグ・アンド・ドロップでテキストボックスなどを配置したフォームを作って、その他ポチポチやるだけで簡単にアプリが作れます。
Microsoft Access を使った事がある人であれば、あれをもっと簡単にしたもの、と思ってもらえればイメージがつくかもしれません。
Google Spreadsheet から移行した
恥ずかしながら、起業してから3年位、売上の管理やプロジェクトごとのP/Lなどは、自分で作った簡単な Google Spreadsheet でまかなっていました。データの入力は簡単なんですが、集計が結構面倒だったり(SQLライクなクエリーは使えるのですが)とか、細かい不満はちょこちょこありました。
データの形式もそれほど多くないので、これを Zoho Creator で置き換えることにしました。まだまだ使いこなせてるとは言えませんが、簡単な入力フォームと集計レポートは半日くらいででき、データの移行なども含めて1日もかからずに出来てしまいました。
データベースの知識がある人向けに説明すると、テーブル数が5個、フォームが5個、集計レポートが2種類です。フォームは簡単なCRUDとはいえ、仮にそれを Ruby on Rails などで作ろうとすると、開発自体で1日かかるかもしれませんし、そもそも慣れていない人だと、サーバー(IaaS なり PaaS)を用意して、アプリケーションをそこに配備するまでには3〜4日はかかりそうです。
Zoho Creator と kintone の比較
では、Zoho Creator と kintone はどう違うのでしょうか。スペック的なところから比較していこうと思います。
機能
アプリ作成
機能 | Zoho Creator | kintone | コメント |
GUIでのフォーム作成 | ○ | ○ | どちらも似たような機能だが、レイアウトの自由度はkintoneが上 |
インポート | ○ | ○ | Zohoの方が若干対応形式が多いが、普通の人にとっては関係なし |
テンプレート | 6種類? | 100種類以上 |
データの一覧表示、レポート
機能 | Zoho Creator | kintone | |
テーブルビュー | ○ | ○ | |
– フィルター | ○ | ○ | |
– ソート | ○ | ○ | |
カレンダービュー | ○ | ○ | |
権限の設定 | ○ | ○ | |
グラフ | ○ | ○ | kintoneの方が若干種類が多い |
ピボットテーブル | ○ | ○ |
ここまでに挙げたような基本機能は、正直どちらもあまり変わらないですね。
応用機能
機能 | Zoho Creator | kintone | |
ワークフロー | ○ | ○ | Zohoの方が、プログラムに近い形式で設定する(if文とか)。 |
通知 | ○ | ○ | |
権限の設定 | ○ | ○ | |
全文検索 | ×? | ○ |
入出力、データ保存
機能 | Zoho Creator | kintone | |
Export | ○ | △(CSVのみ) | Zohoは対応形式が多い。 |
Import | ○ | △ | Zohoは対応形式が多い。 |
他アプリからの移行 | Access, Excel, FileMaker | 無し? | |
他サービスとの連携 | △ | △ | |
– Google Apps | ○ | × | kintoneは出来無さそう。 |
– Dropbox | × | ○ | kintoneはpluginでの提供。 |
– Box | × | ○ | kintoneはpluginでの提供。 |
– Zohoの他製品 | ○ | × | まぁ当たり前ですね。 |
API | ○ | ○ | 基本的なことはどちらも出来ます。 |
入出力関連は、若干Zoho Creator の方が充実している印象です。あと、Zoho は Google Apps のようなオフィススイートがあり、そちらと連携できるのも、場合によっては大きなメリットになりそうです。
値段
一覧表
Zoho Creator | kintone | ||
無料プラン | ○有り | ×無し | |
最安プラン(1ユーザーあたりの月額料金) | $5 | 780円 | |
プランの柔軟さ | ○ | × | kintoneは、ユーザー数による従量課金しかないので、多人数では不利。 |
非ユーザーの扱い | 公開アプリへのアクセスは無料 | ゲストユーザーは有料 |
Zoho の User / Customer
前項一覧表の最後の項目が分かりにくいと思うので説明します。
Zoho Creator の場合、値段表を見て気づくかもしれませんが、User と Customer という概念があります。
Zoho Creator で作成したアプリには、内部向けの非公開アプリと外部に公開するアプリの2種類があります。内部向けの非公開アプリの場合、そのアプリにアクセスしてデータを閲覧・編集するのはUserであり、Userの数に応じた金額になります(無料プラン、定額プランを除く)。
それに対して、外部向けアプリ(例えば、不特定多数向けのアンケート)の場合、アプリにアクセスするのにユーザー認証は必要ありませんが、そうしたユーザーの事を Customer と呼び、プランによって、アプリにアクセスできる Customer の数は決まっています。
kintone のユーザー / ゲストユーザー
kintone の場合は、外部向け公開アプリは作ることは出来ず(※)、アプリを使う人は基本的には「ユーザー」なのですが、取引先などにアクセスさせることを想定した「ゲストユーザー」というのがあり、料金が少し安く設定されています。
※なお、plugin などを使って、外部向けに情報の公開だけは出来るようです。
開発する立場として
ある程度プログラム経験がある人にとっては、どちらもそれほど難しくないと思います。Zoho Creator では独自のスクリプト言語なのに対して、kintone は JavaScript が使えるので、若干アドバンテージかと思います。
開発の情報としては、英語であることを除けば、Zoho Creator の方が webinar などもあったりドキュメントの量も多いと思います。
kintone は、国内で導入している企業が多いので、初心者向けの情報は結構多いところが長所だと思いました。
Zoho Creator vs kintone 個人的な結論
kintone が向くのは小規模ユーザー企業
kintone が向くのは、以下の属性を持つ小規模ユーザーだと思います。典型的には、地方の中小企業でしょうか。
- ユーザー数50人程度まで
- 日本風の帳票・ワークフローなどを簡単に作りたい
- ITにある程度詳しい社員がいない
- 英語アレルギーがある
所謂 SIer がこれから自社サービスとして kintone を使ったシステム開発を行うのは、競合が多く参入障壁が低いのであまりお勧めできません。
Zoho Creator が向く企業
Zoho Creator が向くのは、典型的には2パターンくらいありそうです。
比較的先進的な小〜中規模ユーザー企業
- IT/英語にそれほど抵抗感がない社員が多い
- 日本風の旧来のワークフローにそこまでこだわりがない
- 規模は、50人を超えるくらいから kintone よりメリットがある
小〜中規模 SIer
前述のとおり、kintone は競合が多いですが、Zoho Creator を扱っている会社は、検索してもあまり出てきません。
Zoho Creator をユーザー企業が使うには、英語であったり、すぐに使える日本風のテンプレートが少なかったりと、若干不安に思う部分があると思いますが、その辺を専門家である SIer が埋めることにより、Zoho Creator の良さである価格面や他の Zoho アプリとの連携といった恩恵をユーザー企業が受けることが出来ると思います。
今後
せっかくある程度使えるようになったので、Zoho Creator を使ったハンズオンのセミナーとかやりたいと思ってます。
あとは、Zoho Creator Certified Developer / Solution Provider というのもあるので(お金はかかりますが)、少し検討中です。
お気軽にお問い合わせ下さい
Zoho Creator や本投稿に関して、何かご不明な点などがあれば、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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