生成 AI も大分一般に普及して認知度も高くなってきたと思いますが、ソフトウェア開発開発の現場では引き続きどんどん新しいツールが出たり既存のツールが凄い勢いで改善されています。そんな状況ではワークフローを全社で統一するというのも無理で、各個人・各プロジェクトで、常に新しいツール・バージョンを試行錯誤しながら導入していってるという形です。

そうした中、ソフトウェア開発プロジェクトにはどのような影響があるのでしょうか。

開発プロジェクトに対する影響: 1年前の意見と比較して

そういえば、以前同じような話題で書いたなと思いだして、過去の記事を検索したところ、1年ちょっと前に書いた以下の記事がありました。

「ソフトウェア開発における生成 AI の活用」という項の内容は、この1年で少し古くさくなっています。現在生成 AI が出来る事は、ここに挙げた以上に多岐にわたっています。

「エンジニアに求められるもの、キャリアパスの変化」という項については、1年経った今も意見としてはあまり変わっていません。方向性として二極化していくものと考えています。

開発プロジェクトへの影響: 現時点での意見

新規プロジェクト開発・プロトタイプ作成はコモディティ化する

20年位前は、データベースの値を表示・編集する機能(CRUD)を実装しようとすると、共通処理を提供する便利なライブラリーなどはあったものの、それなりに手間のかかる作業でした。その後、Ruby on Rails のようなウェブフレームワークの登場によって、CRUD のような基本的な処理は簡単に実装出来るようになり、コモディティ化しました。

2025年現在、CRUD のような定型的なものに限らず一般的な技術スタックを用いたアプリケーションを新規構築するのであれば、生成 AI を使って今までより圧倒的に短時間で構築する事が出来ます。これは特にプロトタイプや MVP などの作成で顕著で、今後はそうしたプロトタイプ作成のような開発もコモディティ化していくものと思われます。

完成度を高める仕事は引き続き人手が必要

逆の言い方をすると、現時点では

  • 細かい UI/UX の調整・改善
  • 細部に拘った、統一した世界観のあるデザインの適用
  • エラーを潰していき運用コストを減らす

といったシステムの完成度を高める業務は、生成 AI の助けを借りつつも、人間が泥臭くやる必要があり、それなりに時間がかかります。

既存システムの改修は(現時点では)新規システムほど簡単ではない

前の方で

「一般的な技術スタックを用いたアプリケーションを新規構築するのであれば、生成 AI を使って今までより圧倒的に短時間で構築する事が出来ます。」

と書きましたが、生成 AI を使った既存システムの改修は、新規システムの構築に比べると、まだまだ発展途上と感じます。現実世界のプロジェクトは、1つ1つ特有の状況があり、生成 AI が得意とする平均的・優等生的なアプローチが通用しない部分も多くあります。

とは言え、1年前よりは大分良くなっていますし、適度な大きさのサブシステムに分割されているものなどは、現時点の生成 AI でも比較的上手く扱えると思います。来年頃には既存システムの改修も問題無く生成 AI で出来るようになっていてもおかしくありません。

※但し上級開発者に限る

上の方で

「今後はそうしたプロトタイプ作成のような開発もコモディティ化していくものと思われます。」

と書きましたが、これには上級開発者が存在する事が絶対条件です。

イメージとして、今までの以下のような MVP 開発プロジェクトが

  • チーム: 上級開発者1名、中級1名、初級1名
  • 開発期間: 3ヶ月
  • 金額: 1000万円

以下のようになる形です。

  • チーム: 上級開発者1名、初級1名(補佐)
  • 開発期間: 1ヶ月
  • 金額: 200万円

これは、少なくとも数年は変わらないと思ってます。

もばらぶでやる事

現時点では前項までに書いたような見通しを持っていますが、それを受けて今後どうするのかについても少し述べます。

自社で、新規ソフト・サービスを色々出してみる

以前何度か触れたとおり、今年、以下のソフトをリリースしました。(1)

WP RAG – Build RAG Systems with WordPress Content

この WP RAG を元に、少し違った方向性の WordPress プラグインも開発し、現在 WordPress プラグインディレクトリに登録申請中です。本プラグインは非常に短期間で開発しました。(2)

また、それとは全く異なる分野ですが、現在別のソフトを開発し始めたところです。こちらは少し大がかりですが、今年中に MVP をリリースしたいと考えています。(3)

という形で、今年はソフトを3本リリースする予定ですが、来年以降も新しいソフトをどんどん作っていき、反応が良いものを伸ばしていければと考えています。

既存案件の引き継ぎ・改修・改善に力を入れる

前述の通り、現時点では既存システムの改修、特に規模が大きくなるほど、生成 AI だけでは上手く扱えなくなります。そこに人間が介在する余地があるのですが、もばらぶでは以前から他社様からのシステム引き継ぎなどを多く実施してきました。

システム会社引き継ぎ|株式会社もばらぶ

また、上では触れられていませんが、現在やっている案件も引き継ぎ案件が多いです。

今後も、既存システムの引き継ぎ・改修・改善を行い、お客様のビジネスに資する、この方針は継続して行っていこうと思います。

上級開発者を増やす

生成 AI 時代に必要なエンジニアは、上級者と初級者(※)に二分されると思います。上級者は少ない人数で、今までより多くの成果を出す事が出来ます。

もばらぶでは、こうした上級開発者を少しずつ増やしていこうと考えています。現時点ではまだまだ少ないですが、全般的に意欲が高く能力が高い人が多いので、適切な課題を与えていけばそこまで到達できる人が多く出てくると考えています。

※: 実際には「初級者」と言うよりは、どちらかというと「エッセンシャルワーカー」に近い人達が今後も必要とされ続けると思います。物理的なインフラを触る人、実際に手を動かして最終的な動作確認をしてデプロイボタンを押す人、などです。

まとめ

生成 AI の進化はソフトウエア開発の現場に多大な影響を与え続けています。もばらぶではその影響を見極め、業務に素早く効果的に取り入れつつ、お客様へ提供する価値を高めていければと考えています。

弊社へのお仕事のご相談、ご質問、ご意見等がございましたら、以下のフォームよりお気軽にお寄せください。

お問い合わせ – もばらぶん