それなりの質のイラストが2500円で
先日、NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、スキルを売り買いするマーケットである「ココナラ」が紹介されて、その中で、
- 主婦の書いた2,500円のイラストが売れた
- 企業としては、以前はイラストに30,000円払ったけど、それに比べて得だった
みたいな話が紹介されていたようで、ネット上でも話題になっていました。私自身は番組は見ていませんが、以下のまとめを見れば、番組の内容、あるいはそれに対する世間の反応が分かるかと思います。
#あさイチ 「プロに3万で描いてもらったイラストが2500円で描いてもらえてコストダウン」をいい話として紹介「市場価格を下げるの勘弁して」 – Togetterまとめ
私の意見を書く前に、情報開示しておきます。以前、フリーランス時代に仕事でココナラと関わっていて、創業者・一部の社員の方とは面識があります。
主な意見
上で紹介した togetter の意見をまとめると、以下のようなものに集約されるかと思います。
- ネガティブ意見
- 相場を知らないで安い価格で仕事をする人が増えると、仕事として成り立たなくなってきて困る
- もっと高い値段の価値があるのに2500円しかもらえず、ある意味搾取
- プロの仕事も値切ろうという発注者が増えそう
- ポジティブ意見
- 市場原理だから仕方ない(あるいは当たり前)
- 今までは3万の絵しか選択肢が無かったけど、質は落ちるけど2500円という選択肢も出来て良かった
- 主婦などにとっては、家で空いた時間がお金になるので良い
- その他
- プロの3万円という価格は、絵だけでなく信用・サポートその他も込み
- 3万円の価格で3万円以上の価値を提供できないプロはいずれ淘汰される
ソフトウェア開発でも同じ事が起きている
この手の話はイラストやデザイン領域に限らず、かなり広い産業で起きています。弊社のメイン事業であるソフトウェア開発の分野でも、当然同じことが起きています。
オープンソース
現在ではオープンソースは一般的に使用されており、周辺のビジネスもかなりの規模になっていますが、ほんの15年くらい前は、既存のソフトウェア業界からかなり敵視されたりしていました。ある程度の年齢以上のIT関連の方であれば、当時マイクロソフト CEO だったビル・ゲイツが Linux を敵視していたのはご存知かと思います。
時が経って2017年、Microsoft Azure 上では Linux サーバーが数多く動いていますし、Windows のサブシステムとして Ubuntu が動く時代です。Google や Amazon が所有する無数のサーバー上でも、当然オープンソースのソフトウェアが多数動いています。オープンソースの広がりという時代の流れに抗うのではなく、上手くビジネスに活かす方が得策でしょう。
クラウドソーシング
Coconala は、クラウドソーシングとは謳っていませんが、本質的にはクラウドソーシングに近いです。そして、今回のような話は、ソフトウェア開発の世界でも起きています。
例えば、弊社では、場合によっては Upwork や CrowdWorks も併用してソフトウェアを開発しています。Upwork だと、コモディティ化した技術であれば、時給$10〜$20程度でそこそこのレベルの開発者が雇えますし、CrowdWorks でも、かなり安い金額で仕事をしている人が沢山います。
弊社のようなソフトウェア開発会社が、そうした安価なフリーランスのソフトウェア開発者と同じ土俵で勝負するのは正直無理があるため、違う分野で勝負して、専業として食べていけるだけの金額を稼ぐ必要があります。
ツールの発達・情報の一般化
2000年前後、webサイト開発は(少なくとも金額的には今より)高度な仕事でした。ページ数で数ページ、DBのテーブルも2つ3つ程度の簡単なサイトが、開発に100万かかるというのも普通な時代でした。現在では、WordPress をインストールしてちょっと設定変更して終わり、という形で、1〜2万で済んでしまう可能性もあります。ツールの発達により技術が陳腐化した一例です。
また、現在では、自学者にとっても良い時代です。以下のような情報を元に、サイトを作る技術は比較的簡単に得ることが出来ます。
- 書籍も豊富
- 公式リファレンスが充実しているソフトも多い
- ネット上に分かりやすい解説記事が沢山ある
- 安価な有料のコース(ドットインストール、Udemyなど)
プロの土俵で勝負できないと淘汰される
では、弊社のようなソフトウェア開発会社や専業のフリーランスの開発者はどうしていけば良いでしょうか。自明かもしれませんが、アマチュア、あるいは低価格の人と同じ土俵で勝負しない、に尽きると思います。つまり、高い価格に見合った価値を提供する必要があります。
弊社としては、以下のような価値を提供することで、とりあえずは生き延びています。
- 割と供給が少ない技術
- クラウド上のインフラの構築、自動化
- ニッチな技術、あるいは新しい技術
- パフォーマンス・チューニング
- プロジェクト管理
- 複数人いないと出来ない規模の開発を、うまく管理して進める
- 病気等で人が抜けた場合でも、他の人が代わりとなりプロジェクトを継続
- その他
- 特急対応
- 火消し
- 御用聞き、相談
また、多くの(特に応用)技術はコモディティ化していく運命なので、常に新しい技術分野に進出すると共に、コモディティ化しないような基礎技術や知識を磨き続ける必要があると感じています。
まとめ
Coconala やその他の便利なプラットフォームが今後も出てきて、供給が増えると共に、受注側と発注側のマッチングが格段に簡単になっていくでしょう。それにともなって、多くのスキルはコモディティ化していきますので、フリーランス・あるいは企業としては、同じ土俵で勝負せず、新しい技術分野への進出、コモディティ化しないスキル・価値の提供を行っていく必要があると思います。
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