「システムインテグレーション再生の戦略」を読んだ
以前、「色んなSI」というタイトルで記事を書きました。簡単に要約すると、
- 従来型の人月単位での見積りによる受託開発・SI事業は、色々と問題点が出てきている
- それに伴い、新しい形のSIを模索する会社が随分目立つようになってきた
- 弊社も、そういった方向を模索していく
というものでした。それに関連した内容なのですが、最近「システムインテグレーション再生の戦略」という本(以下「本書」)を読みました。本の内容は、本記事末尾のリンクで確認してもらえればと思いますが、こちらの本のほうが、以前紹介した「オルタナティブSI – 業界を変える新モデル(1) 」という ITpro の記事より深く分析して、色んな切り口から今後の(広い意味での)SIビジネスを考察していました。
そんなこと知ってるよ、という基本的な話も結構多いのですが、現状の問題点、最近出てきている新たな形式のビジネスモデル、今後の技術のトレンドなどが、簡潔にまとまっている良い本なので、ササッと目を通して見ることをお勧めします。
強みは何か?
さて、弊社では、半分以上は所謂従来型のSIで売上を上げています。そんなわけで、本を読んでいる途中から、「自分達の強みを見つけて、それを磨いていかないといけない」、と今後について色々考えさせられました。
技術力?それ単体ではダメ
本書 p.220の「『強み』を明らかにする」という内容のところで
「他社に負けない体制や優秀な人材を抱えていること」
というのは「強みにはならない」書かれていました。技術力の高い会社は沢山あるので、それでは差別化にならないということでしょう。
今一緒に仕事をしているエンジニアの皆さんは、技術力が高い人が結構多いと思っています。
ただ、お客様の立場になって考えると、重要度としては
- 技術力が高い < 払ったお金に見合う成果をだしてくれるか
なので、その高い技術力を効率よく成果として出していく仕組みが必要だと痛感しています。
金額?根本的に難しい
仕事の効率を進め、単価を下げて価格競争力で勝負という方向もあるのかもしれません。ただ、以下の2つの理由により、弊社には馴染まないと考えています。
1つ目ですが、CrowdWorks などでは、地方のフリーエンジニア・デザイナーが驚くほど安い価格で仕事を募集しています。ただ、それに対し、弊社で一緒にお仕事をしている方は、地方在住ではありますがスキルが高く比較的高単価のため、いくら全体の仕組みを効率良くしていったとしても、そうした安い仕事を受けられるとは思いません。
2つ目として、SIにおける価格競争は、根源的にはブラック企業化してエンジニア側にしわ寄せが行きやすい構造のため、弊社には馴染まないと考えます。ブラック企業化せずに価格競争力を高める何らかのブレークスルーがあるのかもしれませんが、それ以外の方向を進めたほうが良いかなと何となく思っています。
また、本書や先の ITpro の記事でも触れられている、kintone やその他ツールを使って低価格でシステムを作るという方向性はありだと思います。(※)
しかし、弊社の場合、業務システムよりはwebサービスなどの仕事が多いこと、kintone 等のツールの経験に乏しいことなどを考えると、この方向性を取るのは現実的ではないかなと思います。
※ちなみに、このビジネスモデルは従来の人月に換算すると比較的高単価ですので、単純に「低価格」と分類するのは違うかもしれません。
新しい働き方?お客様のメリットではない
以前何回か書いた通り、弊社の働き方には、他ではあまり見られないような以下のような特徴があります。
- 全員リモート作業
- 働く時間も基本的には自由
- 正社員ゼロ(フリーランス、副業として参加する他社の会社員のみ)
これは、働く人にとってはメリットですが、お客様にとっての直接的なメリットはありません。
もちろん、こうした働き方を取り入れていきたい会社に対して、ノウハウ・ツールなどの提供といった方向性は将来的にはあり得ると考えていますが。
他社がやらないこと・できないことをやる
他の会社がやらないこと・できないことをやってこそ、他と比べて高い金額を取れ、高い利益に結びつくと思います。何かそういったことは無いかと過去の仕事を色々考えてみると、以下のような仕事が、他社がやりたがらないため高単価で受注して、結構利益が出た記憶があります。
- 納期が厳しい案件
- メンテする人がいなくなったシステムの改修、リプレース
今後は、この辺にもう少し特化してやっていっても良いかなと考えています。
納期が厳しい案件
納期が厳しい案件を成功させるために必要なことは
- とにかく動くものを素早く作る技術力
- 重要ではない機能を削ぎ落とす勇気
だと考えます。
前者に関しては、技術的な引き出しを多く持ち、その中から最適な技術を選択して、素早く実装・デプロイすることが求められます。
後者に関しては、お客様と一緒にプロジェクトのゴールを明確化し、事業として絶対に必要な機能を厳選するというプロセスを行い、その絶対に必要な機能を確実に納期に間に合わせる必要があります。
受託開発を行う会社としては、沢山の機能の実装を行ったほうが短期的にはお金にはなりますが、それで納期に間に合わなくなっては本末転倒です。具体的には、以下のような悪影響がでます。
- お客様のビジネスに影響が出る
- お客様からの信頼を失う(場合によっては損害賠償などを求められることも有り得ます)
従って、必要な機能のみを実装するというのは、納期が厳しい案件では決定的に重要です。
放置されたシステムのメンテ、リプレース
世の中には、以下の理由により改修も置き換えも出来ないシステムが沢山あります。
- 社内で作ったが、担当者が退社して、ドキュメントなどもあまり残っていない
- 開発元との保守契約などを結ばないまま長期間経ち、開発元でそのシステムを分かる人がいなくなった
- 開発元が倒産した
そうしたシステムで
- 機能を追加したい
- バグがあるので修正したい
- HW、OS の保守切れのため、新HW、OS でリプレースしたい
といった要望があった場合、周りの開発会社に相談しても、リスクが高いせいか断られてしまうケースも多いようです。
他人が作ったシステムでドキュメントもあまり残っていないシステムの改修、リプレースに必要なことは
- OS〜フレームワークまで、幅広い知識
に尽きると思います。そうした幅広い知識を活かして、現状動いているシステムで
- どのようなプロセスが動いていて、どのような役割か
- どのファイルが何に使われているのか
というのを正確に把握して、修正なり移行計画を実施する必要があります。
今までやっていない事で可能性はないか?
前の章では、今までやってきた事をベースに考えましたが、それ以外で何かないかというのも考えています。
地方企業のIT化の支援
以前の記事で少し触れましたが、地方(大雑把ですが)の会社では、個々の規模は小さいもののIT化の余地が大きいと思います。従来の発想であれば、そうしたところに自社の製品なりシステム開発を売りつける、ということになるのかもしれません。
本書では第3章で「内製化支援」と「シチズンデベロッパー支援」というシナリオを挙げています。後者の「シチズンデベロッパー」というのは一般には馴染みが薄い用語だと思うので少し説明します。本書の定義ですと、Microsoft Office のマクロや、前述の kintone などを使って簡単なシステムを構築する、非IT部門の「一般人開発者」のことを指すようです。
「内製化支援」と「シチズンデベロッパー支援」の大きな違いは、対象がIT部門なのか非IT部門なのかなと思いますが、本質的にはそれほど違わないと思うので、本記事ではまとめて扱います。
本題に戻りますが、地方の企業ではITによる業務効率化の余地は大きいと思いますが、それを進める予算も人材も無い、という企業が多いようです。
ただ、以下のような事を知らないケースも多いと思うので、この辺を教えつつ、業務の効率化をサポートするビジネスは出来ないかと考えています。
- お金をかけなくても出来る事がある
- 業務に使える便利で低額なサービスが沢山ある
形態としては、定額制のサービスになるのかなと思っています。
遠隔勤務の支援
前述のとおり、弊社では、全開発者(非社員)が遠隔で作業をしています。その業務フローを洗練させ、それを支援するツールを開発して、そうしたノウハウを他社に提供するということが出来ないかというのも何となく考えています。
ただ、IT系の新しい企業はこの辺は自主的に積極的に取り組んでいて、取り組みが比較的遅いのは大手企業や、非IT系の企業のようです。そうした企業にどう訴求できるのか等、もう少し色々考える必要がありそうです。
今後の具体的な行動
「納期が厳しい案件」と「放置されたシステムのメンテ、リプレース」に関しては、それ専用のwebページを作って見ようかと思います。
「地方企業のIT化支援」ですが、まずは地方企業の課題を明確にする必要があるため、今年は地元のイベントとかに積極的に参加していって課題の把握から進めます。
「遠隔勤務の支援」は、アイディア段階なので、もう少しいろいろ考えます。また、自分達の業務フローの洗練を一層進めることが必要だと思います。
まとめ?
旧来のSIビジネスにとらわれず、色んな形のビジネスを模索していこうと考えていますので、今後ともよろしくお願い致します。
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