最近、英語関連の話題が多いですが、今回も英語関連です。

どっかのニュースサイトでこの本が紹介されていたので読んでみたのですが、色々面白かったので簡単に紹介します。

楽天の英語公用語化=アメリカ化ではなかった

楽天が社内公用語を英語にするという話は当時かなり話題になったので当然知っていましたが、ニュース記事をいくつか読んだりしたくらいで、具体的にどういう状況になっているのかなどは全く知りませんでした。

また、ニュース記事などで軽く読んだ位なので、

  • グローバル化を本気で進めていく
  • 海外の優秀な人材を引きつけたい

って意図なんだろうなくらいの認識はありましたが、

「グローバル化」=いわゆる「グローバルスタンダード」≒「アメリカ化」

なのかなという大雑把な印象しかありませんでした。

が、本書を読んで、楽天は「おもてなし」をはじめとする日本的な企業文化を、英語を通じて海外の子会社に浸透させていっている、と言う点が非常にユニークだと感じました。

英語化という観点から、3種類の人間に類型化

ある多国籍企業が社内公用語(殆どは英語)を定めることにより、当然様々な人達に影響があるのですが、本書ではそれを以下の3種類に類型化しています。

  • 言語的疎外者(主に日本にいる日本語話者)
  • 文化的疎外者(英語圏海外子会社にいる英語話者)
  • 二重疎外者(海外にいる非英語話者)

言語的疎外者とは、日本にいるのに突然職場で日本語の使用を禁じられたグループです。この人達がどういう反応を示したかは割と予想が付くのでは無いかと思いますので詳しくは触れません。1点書くとすると、三木谷さんのコミットメントや会社の様々な施策により約9割の人が期限内にTOEICの目標のスコアを達成したそうです。

文化的疎外者とは、海外にいる英語話者のグループのことです。直感的には、自分の母語である英語の地位が社内で格上げされたことにより、自分たちの地位も格上げされる可能性が高いと思うかもしれません。しかし、実際に起きたこととしては、英語化により日本本社の様々なルールが海外に押し寄せてきて、自分たち(例えばアメリカ)の企業文化が大きく変わってしまい、疎外感・ストレスを感じる人達が多かったとのことです。

最後の二重疎外者とは、例えばブラジルの楽天子会社に勤めている非英語話者ですが、このグループが、英語化に対して一番冷静かつうまく対応出来たとのことです。

弊社に当てはめると

文化的疎外者はいない

弊社では海外メンバーも何人かいますし、オフショア開発を行っている企業様との取引もありますが、今のところ英語ネイティブスピーカーは一人もいません。つまり、本書で言う「文化的疎外者」にあたる人はいないです。

そもそも弊社では、完全に英語化にしているわけではありませんが、非日本語話者が含まれるプロジェクトでは必然的に英語でのやり取りとなるため、楽天が直面した問題とそれに対する対処方法はある程度参考になります。

3種類の異なる問題に対処するよりは、2種類の問題に対処する方が楽なのは間違いないので、そういう意味ではこの段階で英語化をもう少し進めていくのも良いかなと思いました。

日本人メンバーは英語に前向き

楽天のような大企業であれば、英語レベルも様々ですし英語が嫌いな方もかなりの数がいるかと思います。

それに対して、弊社は零細企業なので人数は少ないですし、開発の中核を担っているメンバーはたまたま英語が得意だったり、そこまで得意で無くても英語学習の意欲が高かったりしたため、英語化の障壁はかなり低いと感じています。

弊社ではバイリンガルにしたい

そこまで確固とした理由はないが・・・

以前も少し書きましたが、弊社の社内公用語は日英二カ国語にしたいと考えています。特別なメリット・論理的な理由があるわけでもないのですが、以前は

  • 私自身が日本語話者なので、それを広めたい
  • 社内公用語を二カ国語にしている会社というのは聞いたことがないので、面白そう

あたりを理由として挙げました。

言語と文化は切り離せる?

それ以外に思ったところとして、言語と文化の関係性があります。楽天社内では、言語というコミュニケーションツール(英語)と企業文化(日本的)は分離していますが、言語と文化は不可分という立場もあると思います。

個人的には、通常のレベルであれば、ある文化を違う言語で伝えることも全く問題無いと思いますが、微妙なニュアンスを伝えるときに、他の言語では伝えづらいと場合はあると思います。例えば、「カイゼン」と「Kaizen」と「improvement」では、それぞれ細かな差異があるように感じます。

ただ、いわゆる企業文化で、そうした微妙なニュアンスが必要かどうかは、私としては断言できませんが・・・

他文化に寛容な人と働きたい

最後にこれが一番大事かもしれませんが、他文化(特に日本文化)に寛容な人と働きたいという思いがあります。他文化に寛容な人であれば、他言語を学ぶことにそこまで抵抗は無いと思いますし、少なくとも日常会話程度の日本語くらいは勉強する意思がある人と働きたいと思っています。

まとめ

「英語が楽天を変えた」の書評を書くつもりでしたが、後半は弊社自身のことを結構書いてしまいました。

書評的な話に戻りますが、「社内英語化」という事に肯定的な人、否定的な人共に、この本を読むことで得られることは多いと思います。特に「二重疎外者」が一番英語化に適応が速かったというのは興味深いですし、実際に英語化に取り組む際の示唆に富んでいます。

弊社は、英語化を進めると共に、非日本語話者のメンバーがもう少し増えてきたら、徐々に日本語を学んでもらおうと考えています。