5ヶ月以上ブログを書いていませんでしたので、かなり久々です。ブログを「ですます」調で書いていたのか、「だ・である」調で書いていたかすら思い出せなかったので、過去の記事を見返してしまいました。

さて、本題に入ります。題名から分かるとおり、現在ウクライナにロシアが侵攻している問題についてです。この問題に対して、一個人としては、

  • 抗議の声を上げる(SNS やブログで意思表明、デモ参加、など)
  • ウクライナを支援する団体などに寄付をする

といったことは出来ると思いますし、やっている方も結構多いと思います。では、企業の場合はどういったことができるでしょうか。

その前に、当社とウクライナ・ロシアとの関わりについて少しお話しします。

当社とウクライナ・ロシアとの関わり

ロシア人開発者と何度も仕事をした

ここ1年ほどはやっていませんでしたが、過去にロシア人の開発者と何度も仕事をしています。人数で言うと(期間が短い人も含め)5人、プロジェクト数としては4つです。そのうちの2名とは今でも連絡がつくので、先日、何度かメッセージのやり取りをしたりもしました。

彼らは良心的な知識層なので、当然自国のウクライナ侵攻には反対しており、経済制裁による経済悪化などの自国に対する悪影響も憂慮していました。

ウクライナ開発者の採用を検討していた

また、当社では、ウクライナ人開発者の採用も検討していました。ウクライナは国として IT に力を入れており、近年オフショア拠点として進出する企業もチラホラ出てきている状況で、ある意味その流れに乗れないか検討していました。

都合がつかずにキャンセルすることにはなったものの、昨年には現地に訪問する予定も立てていました。

そんな感じで、ウクライナ・ロシアとは「深いつながり」とまでは到底言えないものの、それなりに親近感の湧く国と感じていましたので、今回の出来事には大きく驚いています。

他社の対応

さて、元の話題に戻りますが、この問題に対して企業としてはどう対応すべきでしょうか。まずは他社の例を見てみます。

製品・サービスのロシアからの撤退が増えている

ここ1〜2週間くらいで、大手企業がロシアから撤退するニュースが増えてきました。「ロシア 撤退」などで検索すれば多くの記事が出てきますので、ここでは個別に取り上げることはしません。

ロシアからの撤退を表明した企業の中には、ロシアで多くの利益を上げている企業も含まれています。では、そうした企業は、利益より正義を重視したのでしょうか。もちろんそういう側面もあるとは思いますが、基本的には

  • ロシアでの目先の利益
  • 道義的に「正しくない」事をして自社の評判を落とす事による不利益

の2つを天秤にかけて、後者が上回るから下した決定という側面もあると思います。

必ずしも即時・完全撤退というわけではない

また、一言で「撤退」と言っても、色々あります。

法務・実務的な観点で、今すぐ撤退できない場合も多いでしょうし、全ての事業を完全に撤退するとも限りません。あるいは、撤退の「表明」だけをいち早く行って、事態の推移を見守っている企業も多く見られます。

では、そうした即時・完全撤退をしない企業は糾弾に値する悪い企業なのかというと、必ずしもそうとは言えません。従業員の生活もかかっているでしょうし、公開企業であれば株主からの突き上げもあるかもしれません。一般的に、企業が自社の利益を減らす行動を取るのはとても難しいです。

撤退しない場合もある

また、ロシアからの撤退=正義、と短絡的に考えるわけにもいかない場合もあります。一番分かりやすい例を挙げると、資源・エネルギー関連の輸入や開発権益などがあります。ヨーロッパではロシアからの天然ガスへの依存度が高い国も多いため、いきなりロシアからの輸入を止めてしまうと国内の電力を賄えなくなる国があります。そのため、(長期的には減らしていくにしても)今まで通りロシアから天然ガスなどを輸入をしている国が多いです。

また、日本にとってもロシアからの LNG 輸入は安全保障上重要なため、サハリンの天然ガス・石油開発からは当面撤退しないようです。

ウクライナをサポートする企業もある

ロシアから撤退する企業は増えていく一方ですが、他方、ウクライナの支援を始めている企業も増えてきています。有名どころでは、イーロンマスクの Starlink 社が提供する衛星インターネットサービスをウクライナで使用可能にした件などがあります。

零細ソフトウェア開発会社のもばらぶができそうな事

世の中の(おもに大手)企業がどのような動きをしてきたかを前項に書きましたが、零細ソフトウェア開発会社である当社としてはどういうことが出来るのかを考えてみます。

が、その前に、もばらぶがしない事・出来ない事を簡単に書いておきます。

  • ロシアからの事業の撤退 → そもそもロシアで事業を行っていない
  • ウクライナでのサービスの提供 → ウクライナ(人)にとって有益なサービスを持っていない

ロシア人・ウクライナ人の採用、移住の支援

過去にロシア人開発者と仕事をしたときは、業務委託契約を結びリモートで仕事を進めました。彼らは、ロシアに住んでいても海外の銀行口座を持っていて、支払いもそれらの口座にユーロかドルで支払っていました。(ちなみに、昨年やり取りをしたウクライナ人弁護士も同じでした。)

ただ、つい先日、ロシア人開発者とチャットをしたところ、現在では一般のロシア人でも海外の金融機関での取引に制限がかかっているようで、従来のようにロシアのフリーランスと契約してユーロかドルで支払うというのは難しいようです。

一方、ロシア国内のソフトウェア開発者の中には、ロシア国内の混乱を嫌って海外に移住したい人も多くいるようで、そうした人の中で日本を希望する人も一定数いると思われます。そうした人達の中に当社とマッチする人がいれば、採用及び移住の支援をすることを考えています。

ウクライナ人に関しても同様です。国に残って国のために戦うという人達もいれば、家族の安全を考えて移住を検討している人もいると思います。日本に来たいというソフトウェア開発者がいれば、採用を検討しようと思います。

意見・立場の表明

これは、多くの個人がやっている事でもありますが、今回のウクライナ侵攻に関する意見・立場を表明する事は必要だと思います。

当社としては、当然ですが今回のウクライナ侵攻に対しては反対です。直接・間接に関わらず被害を受けたウクライナ・ウクライナ人に対しては深く同情します。

一方、罪の無い一般のロシア人が、経済制裁などで影響を受けたり差別や脅迫などを受けているというのを聞くと、心が痛みます。新型コロナが中国の武漢から世界中に広まっていったという理由だけで、中国人や中国人に外見が似ている日本人・韓国人が差別されるという事例が2020年以降増えているようですが、それと同じような事がロシア人にも起きているようです。当然ながら、そうしたロシア人に対する差別にも反対します。

省エネ

ロシア経済はエネルギー(天然ガス・原油)価格に大きく依存しています。上述の通り、多くの国が経済的なあるいは安全保障上の理由により、ロシアからの資源の輸入を継続しており、それがロシアに対する経済制裁の抜け穴となっています。

国としては、エネルギー調達先の多様化(※)などを進めて、ロシアにへの依存度を減らす必要がありますが、企業(や個人)としてもエネルギー消費量を減らす事でロシア依存に微力ながら貢献出来ると思います。

※: 日本の場合は、中東依存を減らすための戦略の1つがロシアだった訳ですが

とはいえ、もばらぶの場合は電力を消費するものといえばコンピュータくらいしかありません。従って、出来る事としては、

  • 性能の良いシステムを開発する=必要なサーバー台数を減らす

くらいでしょうか。

企業として得られた教訓

今回のロシアによるウクライナ侵攻によって、企業として得られた教訓もいくつかありますので、それについて少し書きます。

何かに依存しすぎるのはリスク

今回、ヨーロッパ各国が電力供給をロシアの天然ガスに依存しているのは大きなリスクとなっていますが、企業にとっても何かに依存しすぎるのはリスクだと改めて思いました。

当社の場合は、(過去に何回かブログで触れたとおり)大口のお客様数社に売上・利益を依存しています。そのリスクは以前から認識していて状況も少しずつは改善してきていますが、今後はさらに取り組みを進めていこうと思います。

自分の身は自分で守る

ウクライナは、NATO を初めとする欧米諸国に軍事的な協力を求めていますが、欧米諸国も核保有国のロシアと本格的に揉めたくないため、限定的な協力にとどまっています。言い方は悪いですが、見殺しにしているとも言えるでしょう。やはり自分の身は自分で守るのが基本という事でしょう。

企業としても同様で、何かあっても誰かが助けてくれるわけではありません。

  • 毎期利益を出し、他社に安く買い叩かれないようにする
  • 現金をある程度保持しておき、不測の事態に備える
  • 契約の締結前に内容を精査し、自社に不利にならないようにする
  • など

といった守りの施策は、今後も重要視していきたいです。

世間・ネットの影響力は強い

2022年の今、情報が世間に広まる速度は10年前と比べても格段に速くなっています。ある企業がロシアの事業を継続すると発表して数日以内に、世間の声に押されて方針転換をして事業停止を決めたということがありました。

あるいは、ウクライナのゼレンスキー大統領が SNS で効果的な情報発信をすることにより、世界各国から共感を得たり、支援に及び腰だった各国の態度を変えたりしました。

こうした事例により、ネットの情報拡散力の凄さを改めて思い知らされるとともに、当社も、情報発信にもう少し力を入れていく必要があると思いました。

終わりに

ロシアによるウクライナ侵攻は世界に大きな衝撃を与えました。当社にとっては直接的に大きな影響はないものの、色々と考えさせられる出来事でした。当社は小さな会社ですが、微力ながら出来る事を最大限やっていこうと考えています。